「今は忙しいから、初校は軽く見ればいいや。再校でしっかり見よう」
そんなふうに思って、ざっと流し見をして、原稿を編プロに返したことはありませんか?
実はこれ、かつての私自身のことです。
編集プロダクションに依頼する立場だった当時、初校は目を通すだけ。
再校でしっかり読んで赤字を入れ、三校でも「ここ直したい」と追加の修正を出していました。
当時はそれが“許されるやり方”だと思っていましたが、いざ編集の現場に立つようになった今、振り返ると、あの進め方こそ手戻りが多く、トラブルのもとだったと痛感しています。
初校は“仮のもの”ではありません
「どうせまだ初校だから」と思いがちですが、編集プロダクションにとって初校は、構成やデザイン、トーン&マナーを丁寧に反映した“確認すべき第一歩”です。
この段階で方向性や原稿内容のズレに気づかなければ、そのまま制作が進み、後の修正が複雑化・煩雑化してしまいます。
こんな進行は危ない!
たとえば、こんな流れを経験したことはありませんか?
再校:初めて全体を読み込み、赤字多数
三校:さらに細かい要望を追加。スケジュールギリギリ
こうした進行は、編集プロダクション側から見ると「初校を見ていないのでは?」「再校が実質の初校では?」という印象になりがちです。
しかもスケジュールが詰まって焦るのは、お客様自身。
手戻りが多いほど、品質やスケジュールに妥協が生じるリスクも高まります。
理想的なチェックの流れとは?
ここでは、校正段階ごとにどんな視点でチェックすべきか、整理してみましょう。
■初校(方向性と構成を確認)
初校は、デザインやレイアウト、原稿全体の構成をはじめて見るタイミング。
この段階では、「誤字脱字」よりも「全体の方向性やバランス」に注目することが大切です。
・記事構成に抜け漏れがないか
・表現が自社らしいトーンになっているか
・ビジュアル(写真や図)が意図に合っているか
ここで大きなズレを修正しておかないと、再校・三校での変更が困難になったり、大きな負荷をかけることになりかねません。
「初校=方向性を整える最重要ステップ」と意識しておきましょう。
■再校(内容の正確さを確認)
再校では、原稿の正確性や表現の明瞭さに目を向けます。
・専門用語の使い方は適切か
・文章に曖昧さや読みにくさがないか
「ここ間違ってた!」と気づいたら、まだ間に合います。
再校は“完成原稿に仕上げる”ためのチャンス。文章の精度を上げ、読者に届く原稿へと整えましょう。
■三校(最終確認)
三校は「これでもう完成!」という状態に持っていく仕上げ段階。
修正は最小限にとどめるのが原則です。
・表記のゆれ(社名や用語の統一)
・デザイン上の不具合(字切れ・画像抜けなど)
この段階で「やっぱり全体の構成を変えたい」となってしまうと、制作現場は大混乱。
三校では“もう直さない”という覚悟で臨むことが大切です。
編集側も工夫できます
もちろん、初校でしっかり見てもらうための工夫は編集側にも必要です。
・初校時にコメントや意図を丁寧に共有する
・修正可能な範囲と不可な範囲を明確にする
こうした配慮が、認識のズレや手戻りを防ぎ、結果としてスムーズな制作進行につながります。
まとめ:初校こそ“本気”で見ておこう
制作現場では、初校を出すまでに多くの調整や準備が行われています。
その大切な初校を“流し見”してしまうと、再校・三校での修正が増え、全体のスケジュールや品質にも影響が出てしまいます。
初校は“仮”ではなく“本気の確認ポイント”ととらえ、段階ごとの役割を意識しながらチェックを進めましょう。
それが、スムーズな制作と質の高い成果物への第一歩になります。