#編集る

目指す社内報は「学級新聞」——私の初めてのインターナルコミュニケーション

2025.06.09

社内報

 

はじめての“社内報”体験は、小学校の掲示板でした

社内報の制作に携わるようになってから、ふと「自分が初めて“伝える”ということを意識したのは、いつのことだっただろう」と考える機会がありました。

思い出したのは、小学校時代の“学級新聞”づくりです。小学5年生のとき、担任の先生から編集委員に任命され、クラスの出来事を記事にまとめたり、紙面のレイアウトを整えたりしていました。友人に手伝ってもらいながら、アンケートを取ったり、校外に取材に出かけたりしたこともあります。

内容は他愛もないものでしたが、掲示した当日、教室の掲示板の前には自然と人だかりができ、「この記事、面白かった」「あ、私が載ってる」といった声があがるのを聞いたときのうれしさは、今でもはっきりと覚えています。

自分たちが書いた言葉が、誰かの関心を引き、話題になり、反応が返ってくる。今思えば、これが私にとっての「インターナルコミュニケーション」の原体験だったのかもしれません。

インターナルコミュニケーションとは、会社内で従業員同士、または経営陣と従業員のコミュニケーションを活性化するための活動のことです。「社内コミュニケーション」や「インナーコミュニケーション」とも呼ばれます。

 

インターナルコミュニケーションのハブとしての社内報

現在、私は社内報の制作を通じて、企業内のコミュニケーションに関わっています。取材や原稿づくりに頭を悩ませることもありますが、発行後に「この特集、よかったですね」「あの記事で話が盛り上がりました」といった声をいただくと、伝える仕事の手応えを実感します。

社内報は、単なる情報伝達の手段ではありません。

組織内で日々行われているさまざまな取り組みや、社員一人ひとりの思いを丁寧に汲み取り、かたちにして届けることで、部署や立場を越えた「共感」や「対話」のきっかけを生み出すことができます。そうした意味で、社内報はまさにインターナルコミュニケーションのハブとしての役割を担っていると言えるでしょう。

たとえば、ある現場社員の工夫を紹介した記事が、別の部門の関心を引き、その後の連携につながったケース。あるいは、管理部門の取り組みを取り上げた記事に対して、「あの対応、助かりました」と現場から声が寄せられたケース。そうした“思わぬところに届く反応”を、私はこれまでに何度も見聞きしてきました。

企業組織の中には、役職や拠点、世代などの違いによって、自然と壁ができてしまうことがあります。そうした壁を越えて、共通の話題を提供し、社員同士の距離を縮める「静かな橋渡し役」こそが、社内報というメディアの持つ力だと感じています。

 

さいごに

コロナ禍や在宅勤務の拡大により、社内報は“情報を届ける”媒体から、“つながりを生む”媒体へと、その役割がより明確になってきました。

単なる一方通行の発信にとどまらず、「読む」「共感する」「話題にする」といった循環をつくり出すことができれば、社内報は組織の空気そのものを少しずつ変えていく力を持っているのではないでしょうか。

私としてもこれからも、社員一人ひとりの目にふれ、心に残るような社内報をつくっていきたいと考えています。日常の中の“ちょっといい話”や、がんばる誰かの姿が、次の誰かのモチベーションにつながるような──そんな循環の起点になれることを目指して、1号ずつ丁寧に取り組んでいきたいと思います。