これまで社内報といえば、社員だけが読む「社内向けの情報共有ツール」という位置づけが一般的でした。しかし近年では、その枠を超えて、社外にも公開する「オープン社内報」という新しいかたちがみられます。
本記事では、オープン社内報とは何かや、その目的についてご紹介します。
オープン社内報とは?
オープン社内報とは、社外の人も自由に閲覧できる形で発信する社内報のことです。自社のホームページやnote、YouTubeといったプラットフォームを通じて公開することで、社員だけでなく、求職者や取引先、地域住民などにも情報を届けることができます。
特徴的なのは、社員の目線を通じて、会社のリアルな日常や価値観を伝える点です。自社の商品やサービスを紹介する「オウンドメディア」と似ていますが、オープン社内報はより内面的な“企業の素顔”にフォーカスし、共感や信頼の醸成を図ります。
オープン社内報を作る目的
1. 企業の信頼向上
オープン社内報には、社内の出来事や方針を外部に発信することで、企業の透明性を高める効果があります。
情報を積極的に開示する姿勢は、開かれた企業という印象を与え、信頼性の向上に寄与します。
とりわけ、社員の声や日々の取り組みを丁寧に伝えることで、取引先や株主、求職者との関係強化にもつながります。
2. ブランド価値の向上
企業ブランドは、商品やサービスだけではなく、組織の文化や働く人の姿勢によっても形づくられます。
オープン社内報では、現場で働く社員の声や取り組みを通じて、ブランドの“中身”を伝えることが可能です。
そのため、他社との差別化や、より深いブランド理解を促す手段として有効です。
3. 取引先や地域社会との関係構築
企業が地域社会や取引先と良好な関係を築くためには、自社の考えや活動を継続的に伝えることが重要です。
CSR活動や地域との連携、社員の社会貢献などを社内報で発信することで、相互理解が深まり、信頼をベースとした長期的な関係構築が期待できます。
4. 採用活動を後押しする
会社の雰囲気や働く人の姿を、リアルな声とともに発信できるのが、オープン社内報の強みです。
求人情報だけでは伝わりづらい企業の空気感や価値観が伝わることで、応募者の企業理解が深まり、入社後のミスマッチ防止や定着率の向上につながります。
そのため、共感を得る採用広報のツールとして効果的です。
オープン社内報の背景
SNSやWebメディアの普及により、個人でも企業でも情報発信が当たり前になった現代。特にデジタルネイティブ世代を中心に、「外に伝える」ことへの抵抗感が少なくなっています。社内でも「社外にも共有したい」と考える社員が増えてきました。
さらに、コロナ禍を経てリモートワークが定着したことで、オンライン上で会社の雰囲気や社員の活動を伝える手段の重要性が増しています。
こうした時代の変化も、オープン社内報の価値を押し上げる要因となっています。
オープン社内報の事例
それでは実際にオープン社内報を運用している企業の事例を見てみましょう。
ホームページでの発信
パナソニックグループ『幸せの、チカラに。』
出所:https://news.panasonic.com/jp/group-magazine/
エン・ジャパン『en soku!』
noteでの発信
マクロミル『ミルコミ』
YouTubeでの発信
ライズ『ライズのシャナイホー』
出所:https://www.youtube.com/channel/UCYDGatynFEbVRhCTnQXqOMw
一度始めたけれど、やめる選択もある ― SmartHRの事例
オープン社内報は注目の取り組みですが、すべての企業にとって常に最適とは限りません。株式会社SmartHRでは、noteでのオープン社内報を長年運用してきましたが、2024年に終了の決断を下しました。
背景には、「社外向けの発信」と「社内向けの共有」の目的が明確に分かれてきたことがあります。広報活動はコーポレートブログに、社員向け情報は社内ツールに、と整理することで、より効果的な情報発信が可能になったといいます。
この事例は、形にとらわれず、「自社にとって必要な発信のかたちは何か」を柔軟に見直すことの大切さを教えてくれます。
注意しておきたいこと
1. 機密情報や未発表事項の誤公開
社外に出すべきではない情報を誤って公開すると、トラブルに発展する可能性があります。
公開前のチェック体制を整え、複数人で確認を行うことが重要です。
2. 社員の個人情報への配慮
顔写真や氏名など、個人情報の取り扱いには慎重さが求められます。
事前の同意取得を徹底し、掲載内容を必要最小限に抑える工夫が必要です。
3. 社員への過度な負担を避ける
記事制作や撮影が社員にとって負担になりすぎると、本来の目的に反する結果となることもあります。
内容や目的を丁寧に説明し、無理のないかたちでの協力をお願いすることが大切です。
まとめ
オープン社内報は、企業の姿勢や文化を「見えるかたち」で伝える、新しい情報発信の手法です。信頼構築や採用支援、社員のモチベーション向上など、幅広い効果が期待できます。
ただし、運用の目的や方針は、自社の状況に応じて見直すことも必要です。続けることが目的化しないように、「何を、誰に、どう伝えるか」を常に考えながら、自社らしい発信のかたちを模索していくことが、これからの企業コミュニケーションに求められています。