社史を制作するには、少なくとも1年という長い期間が必要になります。このような長期間のプロジェクトを成功させるためには、適切な体制を整え、計画的に進行することが欠かせません。
ここでは、社史の制作体制について、その重要な要素や具体的な役割分担をわかりやすく解説します。
社史編纂室
社史制作を効率的に進めるためには、プロジェクトの中心となる組織が必要です。その代表的な例が「社史編纂室」です。社史編纂室は、社史制作を専門に担当する部署やチームであり、プロジェクト全体の統括を行います。
この組織は、資料の収集から編集、最終的なデザインや印刷の手配まで、社史制作に関わるすべての工程を管理します。社史編纂室を構成するメンバーとしては、まずプロジェクト全体を監督する責任者が挙げられます。この責任者は、通常、企業の歴史や文化に詳しい役員や管理職が担当します。責任者の主な役割は、制作の進捗を管理し、重要な決定を下すことです。また、企業の経営層や他部門との連携を図る役割も果たします。
次に、実務を担う専門スタッフが配置されます。具体的には、資料収集や文章の執筆を担当するライターやリサーチャー、さらにデザインや編集を担当するクリエイティブスタッフが必要です。場合によっては、外部の専門家であるライターやデザイナーを一時的に採用することもあります。こうした外部の力を借りることで、社史のクオリティをさらに高めることができます。
また、社史編纂室では、進行管理を担当する役割も欠かせません。この進行管理では、スケジュール管理や予算の調整、外部業者とのやり取りなど、プロジェクトをスムーズに進行させるための重要なサポート業務を行います。このように管理体制を整えることで、社史制作が計画通りに進み、納期を守ることが可能になります。
編集委員会
多くの企業には、前述の「社史編纂室」のような専任の部署がありません。そこで代わりに、「編集委員会」を設置して社史制作を進めるケースも多くなっています。
編集委員会には、事務局(実務の担当者)の他、企業内外から幅広いメンバーが参加します。例えば、経営層や部門長、創業者やOB・OGといった、さまざまな立場や経験を持つ人々が参加することが一般的です。それぞれの視点を持ち寄ることで、社史の内容が特定の視点に偏ることなく、企業の全体像を包括的に伝えるものになります。
具体的には、経営層が企業のビジョンや価値観を伝えるための内容を提案する一方で、現場の社員やOB・OGは、企業の歴史や日常的なエピソードを語り、社史にリアリティと温かみを加えます。これらの意見を統合し、社史の構成やテーマを決定するのが編集委員会の主な役割です。
編集委員会の会議は定期的に開催されます。ここでは、内容や方向性について意見を交換します。このプロセスで重要なのは、全員が活発に意見を交わし、建設的な議論を行うことです。これにより、社史の完成度が格段に向上します。
さらに、編集委員会は、外部の視点を取り入れる役割も果たします。例えば、歴史学者やジャーナリストなどの専門家を招き、客観的なアドバイスを得ることがあります。このような外部の視点を加えることで、社史がより説得力のある内容に仕上がります。
社史制作を成功させるための体制構築のポイント
社史編纂室や編集委員会といった組織を効果的に機能させるには、適切な人材配置が重要です。特に、プロジェクト責任者には企業の歴史や文化に精通し、決定力を持つ人物を選ぶことが望まれます。また、外部の専門家を適切に活用することで、社史の内容やデザインに多様性や専門性を加えることができます。
さらに、コミュニケーションを円滑にする仕組みを整えることも必要です。例えば、定期的な会議や進捗報告を行い、プロジェクトの現状や問題点を全員で共有することが大切です。これにより、問題が発生した際にも迅速に対応できる体制が整います。
また、社史制作は長期間にわたるプロジェクトであるため、時間と予算の管理が欠かせません。詳細なスケジュールを設定し、進捗を細かくチェックすることで、無駄なコストや遅延を防ぐことができます。計画的に進めることで、質の高い社史を作成することが可能となります。
以上のように、社史制作を成功させるためには、適切な体制を構築し、各組織が連携して作業を進めることが重要です。これにより、企業の価値や歴史を正確に、そして魅力的に伝える社史が完成することでしょう。