社史は企業の歴史や成長の軌跡を記録し、社員や顧客、取引先との絆を深める重要なツールです。
大手企業であれば、“社史編纂室”といった部署やチームがあるなど、制作にあたっての体制が整っていることもあります。一方、中小企業にとっては費用や専門知識の不足が障壁となり、作成に踏み切れないケースも少なくありません。それでも、工夫を凝らすことで、規模や予算にかかわらず立派な社史を作ることが可能です。
ここでは、中小企業でも実現可能な社史作成の方法について解説します。
まずは目的を明確にする
社史を作成する際、最初に重要なのは目的を明確にすることです。社史の目的が明らかであれば、どのエピソードやデータを重視するべきかが見えてきます。例えば、社員への感謝を示したいのか、企業の理念や価値観を伝えたいのか、顧客や取引先との信頼関係を深めたいのか、それとも採用活動やブランディングの一環に活用したいのかなどの目的を定めます。
目的をしっかり定めることで、社史の全体像を描く道筋が明確になります。
実際の作業分担を検討する
次に、実際の作業計画を立てます。計画の第一歩は、社史作成を担うチームを編成することです。社内のリソースが限られている場合でも、資料収集、インタビュー、執筆、デザインといった役割を分担することで効率が上がります。外部の専門家を一部活用するのも有効です。
また、予算とスケジュールの設定も大切です。印刷費やデザイン費などの必要経費を見積もり、現実的なスケジュールを立てましょう。たとえば、資料収集に1か月、執筆と編集に2か月、デザインと印刷に1か月という流れを想定します。
実際の作業(資料を収集する)
実際の作業は、資料を収集することから始まります。社史に載せるべき情報は、社内外のさまざまな記録から得られます。社内の情報源では、社内報、古い写真、販促物などが考えられます。創業者や古参社員へのインタビューも情報を得るための貴重な手段です。外部の情報源では、地元の新聞記事や業界紙、取引先や顧客の声も参考になります。
これらの情報を体系的に整理することで、社史の基盤が整います。
実際の作業(構成を考える)
社史の構成は、簡潔で分かりやすいものを心がけます。中小企業の場合、書籍形式にするのではなく、読みやすさを重視した小冊子やリーフレット形式にすることも多いです。そのためシンプルな構成を心がけます。例えば、序章で企業の紹介を行い、第1章で創業の物語、第2章で成長の軌跡を取り上げます。第3章では社員や顧客との具体的なエピソードを紹介し、終章で未来への展望を語るという流れが一般的です。
また、単なる事実の羅列ではなく、感情を揺さぶるストーリーを交えることで、読者の心に響く社史となります。
実際の作業(デザイン)
デザインや形式も工夫次第で魅力的な社史が完成します。印刷物にこだわらず、ウェブサイトやPDF形式で公開すれば、印刷費用を大幅に削減できます。さらに、写真や動画を取り入れることで、視覚的に訴求力のあるコンテンツに仕上げることが可能です。
社員が撮影した写真や手書きのメッセージを掲載するなど、社員の参加を促す工夫も温かみを生む要素となります。
社史を制作したら活用しよう!
完成した社史は、保管しておくだけではなく積極的に活用しましょう。例えば、新入社員の教育資料として配布することで、企業の歴史や理念を共有できます。また、顧客や取引先への贈呈品として使用することで、信頼関係の強化につながります。さらに、ウェブサイトやSNSで公開すれば、企業の魅力を広く発信する手段となります。