大企業の社史・年史・記念誌制作では、専任の社史編纂室を設置したり、専門ライターや歴史学者に執筆を依頼したりすることがあります。また、多くの場合、数百ページにも及ぶ詳細な記録が作成され、豪華な装丁で発行されます。しかし、中小企業ではこうしたリソースを確保するのは難しいのが現実です。そのため、限られた人員、予算、情報の中で、どのように社史を作るかが課題となります。
本記事では、ヒト・カネ・情報が少ない中小企業が無理なく社史を作成するための具体的な方法を紹介します。
【ヒト】の負担を軽減する工夫
少人数のチームで進める
大規模なプロジェクトチームを組むのではなく、2~3名程度の小規模チームで推進します。社史制作を専任にするのではなく、本業と兼務しても問題ないような人選をすることも重要です。また、業務の合間で進めることになるため、プロジェクトの進捗管理をしっかりと行う必要があります。
ページ数を絞る
たとえば、企業が100周年を迎えたとして、その100年の歴史を細かく記録しようとすると膨大なページ数が必要になります。そこで、10年単位でまとめる、主要な出来事だけをピックアップするなどの方法で、読みやすくコンパクトな社史にするのも有効です。
短期間で作成する
制作期間を長引かせると、関わるメンバーの負担が増し、本業との両立が難しくなります。3~6か月など短期間で完成させるスケジュールを組み、メリハリをつけて進行することが重要です。プロジェクト開始時にスケジュールを明確にし、進捗管理を徹底することで、スムーズな制作が可能となります。
OB・OGを巻き込む
かつての役員や社員に協力をお願いするのもひとつの方法です。定年退職したOB・OGのなかには、企業の歴史に詳しく、喜んで協力してくれる方もいるものです。ダメ元でお願いしてみましょう。
【カネ】の負担を減らす方法
必要最低限の部分だけ外注する
すべてを自社で行うのは難しいため、デザインや印刷など専門的な作業だけを外注するようにします。特に費用がかかる部分として、執筆・デザイン・印刷の3つが挙げられます。このうち、どれを社内で行い、どれを外注するかを事前に検討することで、コストを抑えることができます。
デジタル形式を活用する
印刷せずにPDFや電子ブックの形で公開すれば、コストを抑えつつ社史を広く共有することが可能です。さらに、ネットプリントなどを活用すれば、必要な分だけ印刷することができ、無駄なコストを削減できます。
【情報】の不足を補う工夫
完璧を目指さない
社史を作る際、「すべての出来事を正確に記録しなければならない」と考えてしまいがちですが、完璧を目指す必要はありません。たとえば、大企業であれば、定期的に発刊されている社内報を読み取る、新聞記事を探すなど、多くの情報を収集できます。しかし、中小企業ではそうした記録が残っていない場合が多いです。そのため、「不完全でも価値がある」という視点を持つことが重要です。社史は企業の歴史を伝えるツールであり、必ずしもすべての事実を網羅する必要はありません。
インタビューを活用する
過去の出来事を記録するには、元役員やベテラン社員、OB・OGへのインタビューが有効です。創業時のエピソードや転機となった出来事など、文章だけでは伝わらない生の声を取り入れることで、社史の魅力が増します。インタビューの内容を記事として掲載することで、社員の関心を引きやすくなります。
特定のテーマに絞る
通常の社史は「時間軸」に沿って記述されますが、中小企業ではすべての年代の資料を揃えるのが難しい場合が多いです。そのため、「創業秘話」「主な製品の変遷」など特定のテーマに焦点を当てるのも一つの方法です。これなら、限られた資料の中でも充実した内容に仕上げることができます。
直近の数十年に絞る
例えば、100年史を作る場合でも、100年前の詳細な記録を集めるのは難しいことが多いです。そこで、比較的資料が揃っている直近30年にフォーカスするのも有効な手段です。
アイデアで魅力をプラス
情報の少なさはアイデアで補完しましょう。面白い特集企画を盛り込むことで、「今」を伝える社史を作ることができます。例えば、従業員の座談会や写真コラムを加えることで、読者の興味を引く工夫が可能です。また、従業員のエピソードを交えたコンテンツを作ることで、より親しみやすい内容に仕上がります。
従業員からの資料収集を習慣化
年に一度、社内で「会社にまつわる写真」を募集することで、将来の社史作りに役立つ資料を蓄積できます。イベントの記録や日常の風景を集めておくと、よりリアルな社史を作る際に活用できます。定期的にデータを整理し、共有フォルダに保存するなどの工夫も有効です。