「なんだか最近、若手社員が社内報を読んでいない気がするんです」
そんな声を、ある広報担当のお客様から伺いました。
その会社では季刊で社内報を発行しており、内容もしっかり作られています。読みごたえがあり、かつビジュアルにもこだわる紙面となっています。社内報の制作会社である弊社からみても、決して若手社員が“読みたくない”と思うような紙面ではありません。
「ちゃんと配布しているんです。でも、Z世代の社員に感想を聞くと“あ、見ました”くらいで終わっちゃって…。前はもっと反応があったんですけどね」
制作をお手伝いする立場としても、こうしたお悩みは最近よく耳にします。
“伝えているはずなのに、伝わっていない”。
特に、Z世代と呼ばれる若い世代との間に、情報の受け取り方にズレがあるようです。
Z世代への“届きにくさ”とは
Z世代とは、1990年代後半から2000年代前半に生まれた世代を指します。生まれたときからインターネットが身近にあり、SNSや動画配信とともに育ってきたデジタルネイティブ。
情報の受け取り方はとてもフラットで、なおかつ「直感的に取捨選択する」傾向があります。
つまり、「読む前提」ではないということ。
興味があれば見るし、そうでなければスルーする。情報は“押し付けられるもの”ではなく、“自分で選ぶもの”という感覚が当たり前に根付いています。
従来の社内報のように、「順番に読んで、最後まで目を通す」ことが前提になっている構成だと、そもそも入り口で離脱されてしまう可能性があるのです。
読まれない社内報、こんなふうに見えているかも?
Z世代が社内報を読まない背景には、「構成」や「語り口」が関係しているケースが多く見られます。
たとえば、社長メッセージが1ページ以上にわたってびっしりと詰まっているケース。
一語一句に思いが込められているのは分かるのですが、読む側からすると“どこから手をつけていいのか分からない”という印象になってしまいがちです。
また、ベテラン社員の功績紹介や、長年の取り組みを時系列で並べた特集記事。
どれも意味のある内容ではありますが、若手社員からすれば「関係のない話」と感じてしまうこともあります。
とくにZ世代は、「これは自分に向けられた情報か?」という判断をとても早く下します。
その感覚を前提に、記事の構成やトーンを再考する必要があるかもしれません。
Z世代に“届く”社内報づくりのヒント
では、Z世代にとって“読まれる社内報”にするにはどうすればいいのでしょうか。
もちろん、世代ごとに全く違うコンテンツを作る必要はありません。
ただ、ちょっとした視点の持ち方で、読みやすさや共感度は大きく変わってきます。
1. 共感の軸を見つける
「となりの誰かの話」に惹かれるのは、Z世代も同じです。
たとえば、入社2年目の社員が初めてリーダー業務を任されたときの話。
うまくいかなかったけれど、少しだけ自信になった――そんな共感を得られるようなストーリーには、読み手の心を動かす力があります。
2. 読み方を“選べる”構成にする
最初から最後まで読んでもらうことを前提にするのではなく、「見出しやビジュアルで気になるところから読んでもらう」くらいの気軽さで設計してみるのも手です。
そのためには、小見出しを細かく立てる、記事をコンパクトに分ける、要点を冒頭に書く――そんな工夫が効果的です。
3. スマホ的な読みやすさを意識する
たとえ紙の社内報であっても、スマホ的な視点は取り入れたいところです。
余白をしっかりとり、行間を詰めすぎず、文章もやや短めに整える。
“視覚的な密度”を落とすだけでも、読みやすさはぐっと上がります。
読まれることは、伝わることの第一歩
社内報の本来の目的は、社内に情報を伝え、理解を促すこと。
けれど、伝えるためには、まず「読まれること」が必要です。
Z世代に届く社内報は、けっして特別なことをしなければいけないわけではありません。
彼らの感覚に少し歩み寄りながら、“読んでみようかな”と思ってもらえる構成やトーンを取り入れていく。
その積み重ねが、結果として社内報全体の開かれ方を変えていくのだと思います。