「社史・年史・記念誌をつくりたいけれど、どのくらいの費用がかかるのか想像がつかない」「予算が限られている中で、どんな内容まで実現できるのか知りたい」。そんな声を多くいただきます。
実際のところ、社史・年史・記念誌制作の費用はピンキリです。しかし、目的や工夫次第で、限られた予算でも十分に意味のある社史・年史・記念誌をつくることは可能です。
本記事では、「20周年を迎えた企業が、紙で100部の社史を制作する」という条件をもとに、予算別に実現可能な社史のかたちをご紹介します。
社史・年史・記念誌制作にかかる費用の全体像
まず、社史・年史・記念誌づくりにおいて必要となる費用の内訳を大まかに見ておきましょう。代表的な費用項目としては以下のようなものがあります。
◇原稿執筆やインタビュー取材
◇編集・校正作業
◇デザインやレイアウト制作
◇印刷や製本に関わる費用
すべての工程を外部に依頼すれば当然コストは高くなりますが、一部を社内対応することで費用を抑えることも可能です。
「どこまで外注すべきか?」という判断については、以下のページも参考にしてください。
予算10万円以内:最小限のコストで記録を残す
「費用をかけずに、とにかく記録としての社史を残したい」。そんなニーズに応えるのが、10万円以内での社史制作です。
この価格帯では、制作のほとんどを社内で対応することが前提になります。原稿の執筆からレイアウトまで、社員の手で形にしていく必要があります。
印刷に関しては、ネット印刷を活用することでコストを抑えることが可能です。中綴じ製本のA4サイズであれば、100部でも10万円程度での印刷が可能です。
デザインは、Wordを使った簡易レイアウトでも対応できますが、「Canva」などのAIツールを活用すれば、より洗練された紙面に仕上げることができます。
全体のページ数は、20~50ページ程度が現実的なライン。社内対応の負担や読みやすさを考えると、無理のない範囲でまとめることが大切です。
予算50万円以内:プロの手を借りて「見せる社史」に
「せっかく作るなら、ある程度の見栄えにはこだわりたい」。そんな方には、50万円以内の予算でプロのサポートを取り入れる選択肢があります。
このケースでは、原稿執筆は社内対応としながら、デザインのみプロに依頼します。整ったレイアウトや適切なフォント選びにより、読みやすさと信頼感が大きく向上します。
デザイン費用は40万円前後。印刷については、前述と同様にネット印刷を活用し、10万円前後に収めることができます。
ページ数の目安は20~50ページ程度。文章の量は多くなくても、プロのデザイン力で「社史らしさ」を演出できる点がこの価格帯の魅力です。
予算100万円以内:内容と見た目の両立を目指す
「節目の社史として、読み応えのある一冊に仕上げたい」「多少の費用はかかっても、しっかりとした記録を残したい」。そんな企業には、100万円前後の予算での制作が現実的かつ効果的です。
この価格帯では、基本的な構成に加えて、10ページ前後の特集記事を追加することで、社史全体に厚みやストーリー性を持たせることができます。たとえば、創業エピソードの深掘り、時代背景との関係、主力事業の変遷、社員座談会、地域との関わりなど、企画次第で多彩な内容が展開可能です。
特集記事の企画アイデアについては、以下の記事で具体例をご紹介しています。
原稿執筆は、通常ページは社内で対応しつつ、プロの編集者が全体の文体や構成を整える形が主流です。特集記事については、構成から取材、撮影、執筆までを外注し、完成度の高いコンテンツを盛り込むことが可能です。
デザインは、ページ構成に合わせてプロに一括依頼することで、読みやすさと企業のイメージを両立したレイアウトに仕上がります。印刷については、ネット印刷を活用することで、ページ数が増えてもおよそ12万円前後で対応できます。
このように、社内とプロの力をバランスよく活用しながら、「記録」と「魅せる」要素を両立させるのが、この価格帯の大きな特徴です。
予算が豊富な場合:一生モノの「記念事業」として
「20周年を機に、企業の軌跡をしっかりと記録に残したい」。そのような企業であれば、制作費150万円以上を見込んだフル外注体制も視野に入ってきます。
このケースでは、企画から取材、原稿執筆、編集、デザイン、印刷までを一括でプロに任せることができます。企業としてのメッセージ性を込めた構成、ハイクオリティな仕上がりなど、「社史=ブランドの一部」として活用できるレベルになります。
印刷もオフセット方式で、ハードカバー(上製本)や特殊加工(箔押し・エンボス等)など、記念にふさわしい豪華な装丁が可能です。
まとめ
予算別にポイントをまとめると以下のようになります。
◇予算10万円以内
ページ数:20〜50ページ程度
原稿執筆・デザイン:すべて自社で対応(WordやCanvaを活用)
印刷:ネット印刷(約10万円)
特徴:コスト最優先。社員の手作り感を活かした社内向け記録冊子におすすめ
◇予算50万円以内
ページ数:20〜50ページ程度
原稿執筆:自社で対応
デザイン:プロに依頼(約40万円)
印刷:ネット印刷(約10万円)
特徴:原稿は社内で準備し、見栄えはプロの力で。記念品としての品質を確保
◇予算100万円以内
ページ数:30〜60ページ程度(特集記事を追加可能)
原稿執筆:本文は自社、特集記事は外注(整文・執筆計約40万円)
デザイン:プロに依頼(約45万円)
印刷:ネット印刷(約12万円)
特徴:構成や内容に深みを加えつつ、デザインも整った「記念に残る一冊」に
◇予算が豊富な場合(150万円以上〜)
ページ数:無制限
原稿執筆・デザイン:すべて外部に委託可能(構成・取材・編集一括)
印刷:オフセット印刷、上製本(ハードカバー)、箔押しなど高級仕様も選択可
特徴:社史を「ブランドの一部」として活用。贈呈・展示・採用等にも応用可能
限られた予算の中でも、工夫と目的意識があれば価値ある一冊をつくることは十分に可能です。どこを自社で担い、どこを外部に任せるか。その判断こそが、成功への第一歩といえるでしょう。