書籍や社内報、社史、パンフレット、Webコンテンツ──媒体の種類は違っても、編集プロダクションが制作に関わるとき、必ずといっていいほど行われるのが「企画会議」です。
「会議」と聞くと、ちょっと堅苦しい響きを感じる方もいるかもしれません。ですが私たち編集者にとっては、この企画会議こそがもっとも創造的で、やりがいを感じる時間なのです。そして何より、「面白い」と感じられる瞬間がたくさん詰まっています。
今回は、そんな編集プロダクションの企画会議の実際について、現場目線でご紹介したいと思います。
会議なのにワクワク?“企画会議”はそんな場所
企画会議って、実はとても面白いんです
少し意外に思われるかもしれませんが、編集の仕事の中で「企画会議がいちばん好き」という人は少なくありません。私自身もその一人です。
たとえば、ある企業の社内報を担当したときのこと。
初回の相談では「社員向けに社内報を発行したいけれど、どんな内容がいいのか分からなくて…」という状態でした。そこから始まった企画会議では、会社の風土、部署ごとの課題感、発信したいメッセージを一つずつ整理しながら、ページ構成や連載の方向性を練っていきました。
「若手が読みやすい内容にしたい」
「でも管理職にも伝えたい文化や方針がある」
「現場のリアルを、どう文章で伝えるか?」
そんなやり取りの中で、ある編集メンバーが提案した「現場リレー連載」がきっかけとなり、部署ごとに執筆をバトンのように繋げていく連載企画が誕生しました。結果的に、社内での認知度と関心が大きく高まり、「掲載されたい」と声が上がるまでになったのです。
このように、白紙の状態から、だれかの何気ない発言がヒントとなって、形ある企画に育っていく――。それが企画会議の醍醐味であり、編集プロダクションの力の見せどころなのです。
雑談の中にこそ、企画の種が眠っている
企画会議には、ある種の“雑談力”が必要だと感じます。もちろん、本筋に沿った議論も大切ですが、そこから少し脱線した話の中にこそ、思わぬアイデアの種が隠れていることがよくあるからです。
「そういえば、昔のイベントって写真はあるけど記録がないですよね」
「当時の社員手記、保管してあったはずです」
ある社史制作の打ち合わせで出た、こんな何気ない会話がきっかけになり、「年表+当時の社員の声」という構成が生まれたことがあります。
それまで“沿革”として扱われていた過去の出来事が、社員の言葉を通して生き生きと語られるようになったことで、読みごたえのあるコンテンツとなりました。
「写真だけで見るのと、思い出を添えて見るのとでは印象が違うね」と、クライアント側でも非常に好評でした。
あえて余白を持ち、話を深掘りしすぎずに流れを追う。すると、企画会議はただの打ち合わせではなく、創造の場になります。
編集者は、発言を拾う“感度”と、そこから形をつくる“構成力”が求められる仕事。
企画会議では、その両方が試されると同時に、一番楽しい瞬間でもあります。
編集プロダクションの企画会議とは?
では、編集プロダクションが関わる企画会議とは、具体的にどんなことをしているのでしょうか。
まず大きな役割として、「伝えたいこと」と「伝わる形」を橋渡しすることが挙げられます。
クライアントや著者が持っている想いや情報は、しばしば非常に豊富で、多面的です。それらを“読者の視点”で整理し、どのように構成すれば届きやすいかを一緒に考えていきます。
会議では、次のような要素を掘り下げていくことが多いです。
・想定読者は誰か(年齢、立場、関心、媒体接点など)
・媒体の特性はどう活かすか(紙かWebか、どちらもか)
・どのような表現がふさわしいか(写真?図解?コラム?連載?)
これらを整理することで、全体のコンセプトやコンテンツ構成が見えてきます。
私たち編集者は、その骨組みを組み立てる“設計士”のような役割を担っているのです。
企画会議の進め方(ざっくりご紹介)
会議のスタイルは案件によってさまざまですが、一般的には次のような流れで進みます。
会議は、一度で完結することもあれば、段階的に数回に分けて行う場合もあります。どちらにせよ、ここでの対話と整理が、その後の制作フェーズの土台になります。
【準備】
・クライアントの要望や背景を共有
・類似事例や参考資料を調査
・たたき案(仮の企画)の準備
【会議】
・発信目的や課題感を再確認
・読者像の整理とキーワード抽出
・特集案や連載案などをブレスト形式で議論
・表現手法の検討(文章・写真・図解など)
【整理・たたき台作成】
・話し合った内容をもとに内容を整理
・構成や台割(たたき台)の作成
まとめ:一番おもしろいのは、もしかしたら最初の会議かもしれない
完成した冊子や記事を手にしたときの達成感も格別ですが、その原点になっているのは、たいてい最初の企画会議です。
あのとき、あの話題が出なければ──。
あの一言がなければ──。
そんなふうに、あとから振り返って感じることがよくあります。
企画会議は、ただの準備段階ではありません。むしろそこにこそ、編集者のセンスや視点、そして“編集プロダクションの真価”が詰まっていると感じています。