結束後の会議
数日前の惨事から気持ちも落ち着いた頃。
プロジェクト会議が開かれました。
会議の目的は、社内報のKPIを決めるためでした。社内報を作るだけであれば、それなりのものを作れる自信はありました。しかし、せっかく作るのであれば、“成果”をあげたいと考えていたためです。
そこで会議にて、どのようなKPIにしたらよいのかをテーマに議論を行い、次の会議までの宿題にしようと考えていました。
するとA子から「社内報はWEBで公開しますか?紙で発行しますか?」と質問が。
たしかに、発行媒体を決めないとKPIどころではありません。
そこで、ホワイトボードを使い、それぞれのメリット・デメリットをまとめてみました。
WEB社内報 | 紙社内報 | |
コスト | ◎ | × |
迅速性 | ◎ | × |
情報共有力 | △ | ◎ |
デザイン | △ | 〇 |
愛着 | × | ◎ |
上表のなかで特に議論になったのは以下の点です。
<情報共有力>
当初より、今回の社内報では「全ての従業員に平等な情報共有を実現する」を目指すことを決めていました。情報共有力という意味では、紙面に情報をまとめて共有できる紙社内報に軍配があがります。一方、情報を素早く伝えるという意味ではWEB社内報も有益ではないか?という意見もありました。
<愛着>
どうせ社内報を作るのであれば、社員に愛着を持ってもらいたいという思いがありました。そうすると私の感覚としては物理的に残る紙媒体の方が良いかなと思いました。ただ、議論をしているなかで、B子から「私はSNSでフォローしているアカウントや、YouTubeでフォローしているアカウントにも愛着を持っています」との意見が。たしかに、物理的なものだけに愛着があるというのは固定観念だったかもしれません。さすが若者!
<データ分析>
WEB社内報であれば、ログ管理などからデータ分析が可能です。一方、紙社内報ではデータ分析は不可能です。私としては、“成果”をあげたいという思いがあり、その“成果”を確認するためにはデータ分析が必要であろうと考えていました。この点をメンバーに説明しました。
そして約30分に渡りこれらの点を議論した結果……WEB社内報が採用されました。
WEB社内報を発信するには、様々なWEB社内報ツールが発売されています。しかし、色々と見比べてもあまりピンとくるシステムがありませんでした。
そこで「既存システムを使おう」という結論になり、社内のイントラにアップすることにしました。
発行媒体は決まったものの、議論に結構な時間を使ってしまいました。
そこで、本題のKPIについては2日後にもう一度ミーティングすることにしました。
KPIを決めるプロジェクト会議
2日後、再度プロジェクト会議を開催。
実は、事前にC子に「イントラのログから、閲覧数や社内報ページの滞在時間、各記事の閲覧数を確認できるか」を確認してもらっていました。
そこで、プロジェクト会議冒頭に私から、以下のKPIではどうかと提案をしてみました。
・社員200名のうち160名以上が社内報を閲覧すること(閲覧率8割)
・社員1人あたり月間5回アクセスすること(月間のPV数1,000回)
すると、B子から思いがけない発言が。
「以前、社員向けに行った意識調査では、社内報を読みたいと思う社員は6割でしたよね?それで、閲覧率8割は無謀なのでは?」
そこを何とかするのがこのプロジェクトの役割だろ!と言いかけた直前。
C子が口を開きました。
「そしたら、単に社内報をイントラにアップするだけじゃなくて、メールで公開したことを伝えるとか、小分けにして発信するとか、何か工夫が必要だよね。」
すると、A子も
「たしかに、いい記事を作れば閲覧数が増える訳じゃないだろうからね。部の朝MTGで口頭で伝えるとかもアリかも。あと、発信日時を変えると閲覧率が変わりそう。出社前にアップして、朝一でメール周知とか。」
お前ら、いつの間に仲良くなったんだよ!とツッコミたくなりましたが、前向きな意見に気持ちが明るくなりました。
しかし、そこから事件が起こります。
C子の突然の涙
社内報を発行したことをメールや朝MTGで伝えるというのは良いアイデアです。
これらは有無を言わさず採用することになりました。
問題はイントラにアップする時間と、発信頻度です。
それぞれの意見は下表のとおりです。
イントラにアップする時間 | 発信頻度 | |
A子、B子 | 朝のMTG後 | 月1回 |
C子 | 昼食時間 | 月2階 |
大抵の社員はネットを閲覧しながら昼食を食べています。そのため、私は昼食時間にアップするのが良いと思いました。また、午前中は何かとトラブルが多いため、朝のアップは避けたいなとも。
これを伝えたところA子とB子から猛反対。
朝MTGで社内報を発行したことを伝えるのだから、MTG終了後に読むだろうし、朝は社内に大抵の社員がいる。昼食の時間は営業マンがいないだけでなく、外で食事を済ませる人も少なからずいるので、多く読まれないだろうと。
たしかに合理的です。私やC子は何も言い返せませんでした。
次に発信頻度です。
C子からは月2回の発信が良いのではないかとアイデアがでました。
月1回だと少なすぎる。月2回発信することで、社員も楽しみにしてくれ、閲覧率も上がるのではないかと。
私は、C子のやる気を評価しました。まさかここまで社内報に積極的になってくれているとは。
しかし、私たちは社内報の制作の他に、通常業務を抱えています。通常業務が滞るようだと、問題があります。私も当然、月1回の発行だと思っていただけに、3対1の構図となり、議論は収束しました。
これにより、イントラにアップする時間と発信頻度の両方がA子・B子の考えが採用される形となってしまいました。
そこで私は、「あくまでも最初はA子・B子の案を採用するが、未来永劫これでやる訳ではなく、C子の案も絶対に必要となってくるから間違ってはいない。」とフォローを入れました。
会議を終わらせるために、「次回は各人で社内報のネタを考えて来てね!」と言おうとした所……
C子が人目もはばからずに大泣きをしてしまいました。
理由を聴くと、「A子とB子の意見ばっかり採用して私の意見を何一つ採用してくれないのは間違っている。裏で3人が繋がっていて、私をおとそうとしているのではないか?」とのことでした。
しかしながら本当にそんなことはありません。
そこで「もちろん、そんなことはない。自身の提案を採用して欲しいなら、社内報のネタをなるべく多くA子、B子よりも質で上回るように考えてくれ!私はC子に期待しているから。」と言って会議は終わりました。
A子とB子は、C子が泣いても我関せずです。
その場にいる全員がC子のメンタルの弱さに途方に暮れていました。
さっきまでの良い雰囲気は何だったのか?
全員で一致団結してやるじゃなかったのか?
そんな一抹の不安を抱えながらも、刻一刻と近づく2月の発行期限に向けて次回の会議日程を決めました。