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団体史の制作ポイント ~企業の社史とは異なる視点~

2025.03.12

社史/年史/記念誌

企業は、10周年、50周年、100周年などの節目に「社史」を制作することがあります。

一方、団体も「団体史」を制作することがあります。団体史は、団体の歴史を記録したものです。企業の社史と異なり、個々の利益追求ではなく、社会全体や業界全体の発展に寄与してきた軌跡を示すものとなります。そのため、関係者の層が広く、多様な視点を取り入れることが求められます。

ここでは、団体史の制作のポイントを、「社史との違い」という視点で紹介していきます。

創立の背景は欠かせない

団体の成り立ちを知ることは、その目的や意義を理解する上で欠かせません。どのような社会的背景のもとで、誰がどのような課題を解決するために立ち上げたのかを詳しく記録することが重要です。

祝辞やメッセージの掲載

団体史では、歴代の代表者や関係者からの祝辞が冒頭に掲載されることが一般的です。これは団体の歴史に対する評価や、今後の発展への期待を表すものとして大切な要素となります。

企業の社史では代表取締役の挨拶が中心になりますが、団体史では自治体の首長や関連団体のトップからのメッセージも加わることが多くなっています。

役員の変遷を記録

企業の社史では主に社長の変遷が記録されますが、団体史ではトップだけでなく、役員全体の変遷を詳しく記録することがあります。団体の運営は、特定の個人ではなく多くの関係者の協力によって成り立っているため、それぞれの役員が果たした役割を振り返ることが団体の成長の軌跡を示す上で重要となるためです。

また、特に貢献の大きかった人物については、功績を紹介するコーナーが設けられることもあります。どの時期にどのようなリーダーシップが発揮されたのかを整理することで、団体の発展の流れが分かりやすくなります。

活動の柱となる要素を整理

ほぼすべての社史では、「企業の事業内容の変遷」がメインコンテンツとなります。

一方、団体史では、政策提言や社会貢献活動がメインコンテンツになることがあります。どのような課題を提示し、どのような変化を促したのかを振り返ることで、団体の活動を振り返ることができるためです。

また、地域社会との関わりや災害支援など、団体が社会的に果たした役割について詳しく紹介することがあります。例えば、東日本大震災や新型コロナウイルス対応など、特定の時期に行われた重要な活動について、特集記事としてまとめるイメージです。

未来に関する記述が少ない印象

企業の社史では、過去・現在・未来の流れを紹介します。そのため、今後の事業展開や成長戦略について触れることが一般的です。しかし、団体史では、未来に関する記述が少ない傾向があります。

これは、団体が特定のリーダーのもとで進む企業とは異なり、組織の形態や方向性が時代ごとに変化するため、明確な未来像を示すことが難しいためです。そのため、団体史では「過去の記録」と「現在の活動報告」に重点が置かれることが多くなります。

広告が掲載される場合がある

企業の社史では、他社の広告が掲載されることはありません。一方、団体史では、会員企業などの広告が掲載されるケースがあります。これは、制作費用の一部を賄うための手段として活用されることがあるためです。ただし、これは比較的珍しい例であり、多くの場合は「周年事業積立金」などを活用し、制作費用を捻出しています。

配布先の多さ

社史や団体史の制作を請け負う弊社では、完成した冊子の配布業務を委託されることがあります。

企業の社史の場合、配布先は本社・支社・営業所などの企業内に留まることが多く、対象が比較的狭いです。一方、団体史の場合は配布先が多岐にわたります。業界関係者や自治体、関係機関、さらには国の要人に送付されることもあります。特に、大臣クラスの人物へ送付する際には、その重みを感じます。